ニュースの概要
ANA、日本貨物航空(NCA)、ルフトハンザ・カーゴ、スイス・インターナショナル・エアラインズの4社が、日本と欧州を結ぶ航空貨物で協力を深める覚書を結んだ。各社が持つ航空網と貨物の運用ノウハウを持ち寄り、運航経路やサービスの広げ方を話し合う。協力の対象はアメリカ直行便に限られず、日本発の国際輸送全体の運べる量や乗り継ぎの利便性を高める可能性がある。現時点では具体的な便数や料金の発表はなく、検討の入り口に立った段階だ。ただ、アメリカ向けの転送や代行購入を手がける事業者にとっても、無関係とは言えない動きである。
引用元: ANA、NCA、ルフトハンザ・カーゴ、スイスが日欧貨物輸送で協力強化(LNEWS)
分析・見解
覚書の段階だからこそ読み取れる4社の狙い
今回の合意は、運賃や便数を決めた契約ではない。あくまで協力の方向を確認する覚書である。それでも4社の組み合わせには意味がある。ANAとNCAは日本側の発着と貨物専用機を持つ。ルフトハンザ・カーゴとスイスは、欧州の大きな拠点空港から世界各地へ荷物をつなげる。日本の荷主から見れば、欧州の先にある都市への道筋が太くなる。
狙いは、荷物の「行き先の広さ」を共通の商品にすることだと読める。1社だけでは届かない都市でも、4社のネットワークをつなげば一括で引き受けやすくなる。
アメリカ直行便に限らない協力が持つ意味
転送サービスの世界では、日本発アメリカ向けの直行便が主役になりやすい。しかし実際の荷物は、直行便だけで動いているわけではない。欧州の拠点空港を経由して北米へ向かう経路も、運賃や空きスペースの状況によっては選ばれる。
今回の協力がアメリカ直行便に限られないという点は、ここで効いてくる。日欧間の運べる量が増え、乗り継ぎの手続きが滑らかになれば、日本から欧州経由でアメリカに届ける選択肢が現実味を増す。直行便の席が埋まる繁忙期に、代わりの道が一つ増えることになる。
貨物専用機と旅客機の腹を組み合わせる強み
航空貨物は、貨物専用機と、旅客機の床下スペース(=ベリー)の二つで動く。旅客機の床下は、旅客の需要に便数が左右される。専用機は貨物の需要に合わせて飛ばせる反面、就航できる都市が限られる。
日本貨物航空は専用機の運航会社であり、ANAやルフトハンザ系は旅客便の床下も使える。両者を組み合わせれば、荷物が多い路線は専用機、細かな都市への配送は旅客便といった役割分担がしやすい。似た事例として、航空会社同士が旅客分野で結ぶ共同事業がある。便の時刻をそろえ、乗り継ぎを一つの切符で売る仕組みだ。貨物でも同じ発想が進めば、荷主は複数社の手配を意識せず、一つの窓口で頼めるようになる。
実際に変わるのは、運賃より先に手続きの滑らかさ
私が注目するのは、運賃の下落よりも手続きの共通化である。航空会社をまたぐ荷物は、書類の受け渡しや荷物の積み替えで遅れやすい。システムの連携が進めば、荷物の位置情報を一本化して追跡でき、乗り継ぎの待ち時間も読みやすくなる。
これは、納期を約束する転送業者にとっては運賃より大きな価値になり得る。運賃は市況で上下するが、到着日の読みやすさは営業上の信頼に直結するからだ。ただし、具体策が出るまでは期待を前提に動くべきではない。
ビジネスへの影響
今すぐ動く必要はないが、情報は取りに行く
覚書の段階では、運賃表も便の時刻も変わらない。転送サービスや代行購入を営む事業者は、今期の契約や価格を急いで見直す必要はない。一方で、仕入れ先の混載業者(=複数の荷主の荷物をまとめて航空会社に預ける会社)に、4社の協力が荷受けや運賃に与える見通しを聞いておく価値はある。早い段階で情報を持つ側が、後の条件交渉で有利になる。
経路の複線化を前提に、見積りの持ち方を変える
実務で備えられるのは、アメリカ向けの輸送経路を一本に頼らないことだ。直行便が混み合う時期に備え、欧州経由の見積りも定期的に取っておく。比較のため、日数と費用の両方を同じ表に記録しておくと、状況が変わったときに判断が速い。
顧客への説明も見直したい。納期の幅を示す際に、繁忙期の代替経路があることを伝えられれば、安心感につながる。
関税や通関の影響は別に確認する
経路が増えても、通関の条件は国ごとに異なる。欧州で積み替えるかどうか、積み替え時に書類が必要かは、扱う荷物の種類で変わる。少額の貨物の免税基準や関税の計算は、経路を変えると影響を受けることがある。新しい経路を試すときは、まず小口の荷物で実測し、費用と日数を確かめてから本格的に使うのが堅実である。