市場調査会社Spherical Insightsが発表した報告書によれば、世界の地上輸送市場は2032年にかけて持続的な成長を遂げる見通しです。この予測の背景には、eコマースの世界的拡大とサプライチェーンの地域分散化という2つの構造変化があります。同時に、各国が掲げる炭素削減目標の達成期限が迫る中、輸送手段の電動化とデジタル管理への移行が、単なる環境対応を超えた競争優位の源泉として再定義されつつあります。
参考: グローバル地上輸送市場規模、報告書予測 2032(Spherical Insights)
分析・見解
規制による電動化圧力とインフラ整備の遅れが同時に進んでいる
今回の市場予測で注目すべきは、成長率そのものよりも、成長を支える構造転換の速さです。欧州では2035年までに、新車として販売するガソリン車やディーゼル車を段階的に禁止する規制が施行されます。北米でも、同様の規制が州レベルで広がっています。この規制環境の変化が、商用車メーカーに電動トラックへの投資を迫る一方で、充電インフラの整備が追いつかず、実際の運用でのボトルネック(=つまずきの原因)になっています。
総保有コストの逆転が近づき中堅事業者の投資判断を加速させる
実際、ドイツの物流大手が2025年に公表した試算によると、電動トラック1台あたりの総保有コストは、現時点では軽油車を15〜20%上回ります。しかし2028年以降は逆転する可能性が示されました。このコストが逆転する時期が近づくことで、これまで様子を見ていた中堅事業者の設備投資が一気に加速すると予想されます。
AIによる配車最適化が空車走行率を3割減らす事例も出ている
加えて、リアルタイムの位置情報と積載率データを組み合わせた配車最適化システムの導入が、大手だけでなく地域の事業者にも広がり始めています。これまで「勘と経験」に頼っていた配車業務が、AI(人工知能)による需要予測と組み合わされることで、空で走る車の割合を従来より30%減らした事例も報告されています。燃料費と人件費を同時に抑えることが、現実のものになりつつあります。
ビジネスへの影響
都市部から電動車を導入する「ハイブリッド運用」が現実的な投資戦略
この市場環境において、輸送事業者が優先すべきは、段階的な車両更新計画の策定です。全車両を一斉に電動化するのではありません。都市部の配送ルートから電動車を導入し、長距離の幹線輸送では当面ハイブリッド車を維持する「ハイブリッド運用」が、投資のリスクを抑えつつ、環境対応をアピールできる現実的な解になります。
CO2排出量の可視化能力が輸送委託先を選ぶ基準になりつつある
また、荷主企業にとっては、輸送を委託する先を選ぶ基準が変わる転換点です。従来の運賃水準だけではありません。CO2排出量を数値で示す力と、削減計画の具体性が、調達先を評価するうえで欠かせない項目になりつつあります。Scope3(=取引先を含めたサプライチェーン全体の排出量)の開示が義務化される流れの中、輸送パートナーの選び方を誤ると、自社の環境評価に直接影響します。早めに基準を明確にし、パートナー企業と共同で削減の計画を立てることが勧められます。